私は、週刊少年ジャンプの編集長をしていましたが総合出版社では異なるジャンルへの異動もありますので漫画編集者としてのキャリアを積み重ねるのが難しく、専門的な知識や技能を継承しにくいのが実情です。
そこで、「漫画しかやらない会社をつくろう」と2000年にコアミックスを設立しました。
今は、漫画のデジタル化が進み作品単体が評価される時代となっています。それこそコアミックスにとってはいい方向です。漫画に特化した人材育成に力を入れていますので作品で勝負できるからです。
漫画づくりは、共同作業です。
編集者と作家さんがチームを組み、意見を交わしながらいい作品は生まれます。「面白かった」「つまらなかった」なんて感想だけなら小学生でもできるでしょう。
漫画編集者は、作家さんの描きたいこと、言いたいことなど書き手の本質を見抜いて「こうしたら読者に伝わるのではないか」と批評や評論をして提案することが仕事です。
つまり、漫画編集の本質は「人を理解する」ということ。ただし、人を理解するには時間を要します。長い時間をともに過ごすことで作家さんの性格や考え方がわかるようになるのです。
漫画に興味を持っている人より人に興味のある人のほうが漫画編集者に向いています。漫画はキャラクターが大事ですよね。ところが、人間を面白がれなければいいキャラクターなんて思いつきません。
さらに一人前の編集者になるためには5~7年はかかります。1万時間訓練したらプロになれるという「1万時間の法則」というものがありますが、それをクリアするには最低でも5年は必要です。だからこそ、当社は長い目で編集者を育成しています。そもそも、人の才能なんてどんぐりの背比べ。「コツコツ」さらに「コツ」をプラスして継続できる人が最後には成功するのです。
昔、日本は「黄金の国」と言われていましたが漫画やアニメ、ゲームなどのコンテンツこそが現代における日本の黄金です。当社は熊本県に漫画家のための施設を創りました。そこには国内だけではなく世界中から漫画家を目指す人たちが集まっています。
私たちは漫画の技術を惜しみなく教えており、それぞれの国で面白い漫画をつくってもらえれば漫画のマーケットはますます世界中に広がります。さらに彼らも紙とペンだけで億万長者になれるのです。だからこそ、世界中の人たちにもっとチャンスの場を提供したいと考えています。一緒に新しい黄金を創っていきましょう。
何もしない完全主義者より、何かやって失敗するおっちょこちょいのほうが私は好きです。「嫌い」なら縁を切るから責任が生じませんが「好き」には責任が生じてきますし「好き」であれば一生懸命にやるからです。
当社に入社したら全員漫画編集者です。そして、若い人にチャンスを提供するのも特長の一つです。ある編集長は「チャンスは人生で3回やってくる。チャンスだと思ったらグッと握れ」といつも言っていましたがここには、自分一人では気づけなくても「それチャンスだよ」と言ってあげられるチームがあります。
ホームランバッターは必要ありません。コツコツコツと、全員がバントしている会社ですから。