漫画編集者ならではの苦労や魅力とは?
若手編集者が本音を語る座談会。
編集者を目指している方は必見です!
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ゼノン編集部
2022年入社
小林 恭子KOBAYASHI KYOKO
ゼノン編集部
2022年入社
加藤 成晴KATO SHIGEHARU
ゼノン編集部
2022年入社
田中 海州TANAKA KAISHU
僕は、漫画というコンテンツが一番好きだったからですね。小学生のとき、友だちの家に遊びに行ったら、そのお兄さんが集めた漫画がずらっと本棚に並んでいたんですよ。それを見て感動してからは自分も集めるようになり、それから漫画を仕事にできたらいいなと思ったのがきっかけですね。
私は商学部だったので、マーケティング系の会社に勤めようかなと思ったこともあったんだけど、「大学で学んだことを活かす仕事でいいのかな?もっと自分の好きなことを仕事にしたほうが性に合っているし、人生が充実するのではないか」と考えたんです。映画やゲームも好きだけど、やっぱり漫画が一番語れるし、私、意外と飽き性なんだけど漫画なら飽きないだろうと思っていろんな出版社を受けました。
今も飽きてない?
全然、飽きない(笑)
僕は、大学時代に「カバディ」というインド発祥のマイナースポーツをやっていたんだけど、このスポーツをはじめたきっかけがカバディを題材にした漫画だったんです。日本代表候補にまで選んでもらって人生を変えるような経験ができたんだけど、よくよく考えたら自分がカバディに興味を持ったのも漫画がきっかけだったので、「漫画って人の人生を変えるんだな」って思ったんです。
漫画がきっかけで何かをはじめるのってよくあるよね。僕も漫画でバスケをはじめたし、友人も漫画でサッカーをやり始めたから。
コアミックスはどうして受けたの?
一番は、漫画専門の会社ということ。他の出版社だと漫画編集を志望しても他の部署や別の雑誌編集になることが多いという話を聞いてからかな。「趣味を仕事にしたいと思ったのに、趣味が仕事になってないって嫌だな」と思っていたら、コアミックスが漫画編集職を募集しているのを知って志望しましたね。
僕も加藤くんと一緒で、漫画に携われなかったら絶対に辛いだろうなと思った。そもそも就活のときに一番重要視していたのが、「自分が好きなコンテンツに携われること」なので、出版社の他にゲームやおもちゃとかアミューズメント系を志望していたんだけど、たまたまコアミックスの募集を知って、「ここなら絶対に漫画編集者になれるんだ」と驚いたのがきっかけです。
そういう人って、意外と多い気がするよね。
私は、出版社をあらかた受けてみて1社だけ最終面接の直前まで進んだけど最終的には全落ち・・・。マーケティング会社から内定はいただいていたんだけど、出版業界があきらめきれなくなって。「最終面接まで進んだし、実は、私は向いているんじゃないか」という気持ちが芽生えたんですよね。5月くらいかな?
ラストチャンスだ。
そこで、いろいろ探していたらコアミックスが見つかったんです。もともと少年誌や青年誌が好きだったし、しかも漫画編集者が確約されているし。会社は知らなかったんですけど、調べたら『ワカコ酒』とか知っている漫画もあるしいろいろなジャンルの作品があって魅力に感じたので、ラストチャンスで受けました。もう、受かったときはめっちゃうれしかった。速攻で内定をいただいていた会社に「申し訳ないです、すみません」と電話して。
僕も、ここに受からなかったら完全にエンタメ系はあきらめようと思っていた。面接に集中したいので他の企業は一切受けなかったんですよ。そうしたらコアミックスに受かったので、「就活終わったー!やったー!」ってうれしかったね。
一番は、「雑誌をつくる仕事なんだ」って少し驚いた。漫画編集者って、漫画家さんと「これは良いですねー」とかずっとしゃべっているのかと思っていた。でも実際は半々ぐらい。1年目という立場もあると思うけど。
編集長であっても、自ら写植表を持ちながら作品のトビラページに置くキャッチコピーを考えていたり。
作品のトビラページや最終ページのキャッチコピーって、すごく大事だよね。『コミックゼノン』は月刊誌なので、1か月前の内容を思い起こさせつつ期待させる内容にしないといけない。文字数も限られていて「あと1文字足りない!」ということがよくある(笑)
私は、逆に言いたいことがいっぱいあって長くなっちゃう。
次回の内容を説明する欄外の柱も字数の制限が決まっているので難しいよね。
ただ、作品を盛り上げるためのキャッチコピーって、作家さんとかもめちゃくちゃ見てくれるんですよね。『トレース』の古賀先生はSNSをやってらっしゃるんですけど、「かっこいい宣伝ページをつくってもらいました」とたまに載せてくださるのでうれしいです。先輩からは、「作家さんは編集者の汗を見ている」とよく言われますが、まさにその通り。
自分がサブ担当についている先生は、柱以外に1ページ目の部分を写真に撮ってSNSにあげてくださるんですよ。「いいね」がいっぱい付いていたりすると、「ちゃんと読者の方に届いているんだ」ってモチベーションが上がるよね。
僕は、校正紙の段階で田中くんのキャッチコピーを見るたびに、「今回はこういう感じか、いいね」と思っている(笑)
いやいや、読者を飽きさせないために、毎話ちょっとずつ面白い要素を入れたいなと思いながらつくっていて。例えば、韻を踏んでみたり、流行っているネタを取り入れてみたり。
そういえば、作品づくりで先生と取材に行っていたよね?
サブ担当のご挨拶をかねて。グルメ漫画の作家さんとお会いするので、料理を取材がてら食べに行きましたね。お店の料理を頼みながら、「こういう味が違いますね」「あのキャラなら、こんなセリフを言いそうですね」とか話しながら。
私はまだ作家さんと直接お会いしたことがない…。
僕は、先輩から引き継いだ新人の作家さんが会社に来てくれたので打ち合わせしたのが初めての機会かな。少しでもお役に立てればと必死にがんばりました。
私も新人の作家さんとはやり取りしているんだけど、北海道や関西方面にお住まいなので会えてない。やっぱり直接お会いしたい。
お会いしたほうが意思疎通がとりやすいよね。僕は、新人なので連載作家さんから見ると実績がなくて、「本当にこの人で大丈夫かな?」と思う気がするんですよ。なので、どこかしらでも自分のすごく得意な部分をつくることが大事かなって。
作家さんをうならせる、みたいな?
そうそう。編集長に言われたんだけど、「経験で勝てない分、作品の知識だけは負けないようにしよう」と思っていて。作家さんとお会いする前には必ず作品を読み返して、例えば、「過去にこんなセリフを言っているので、このセリフは合わないかもしれませんね」って、頭の中のデータではないですけど。
僕は、何かしら情報をお伝えできるようにしたいです。例えば、作家さんに「お好きな映画はなんですか?」と伺って、それを次の打ち合わせまでに必ず観ておく。そうすることで何かしら接点をつくって、それを積み上げていくと信頼につながっていくなと思っていて。
私は感想を話す前に、とりあえず自分が気に入ったところをお伝えするようにしています。心理学の先生が教えてくれたんだけど、人間はネガティブな意見から入ると脳が耳を閉ざしてしまうから、初めはポジティブなことから入るようにしている。私はまだ、ネームをパッと見て、すぐに改善点を伝えられる能力は全然ないので、ネームもらったときに気になったことは全部メモしています。
サブ担当でついている作家さんと毎月打ち合わせしているんだけど、新キャラを出す話になったんですよ。企画が詰まっていたときに、自分がポロッと出したアイデアを拾ってもらい、そこからすごく膨らんで新しいキャラが登場したんです。もちろん、つくっているのは作家さんですけど、自分が考えたものが形になったのがすごくうれしかった。
いいな、すごい!
もう一つが、雑誌の付録を手がけたときに記事も作成したんですよね。
あ、自分の顔出ししたやつだ!
そう、自分の顔を掲載した記事。これがすごく大変だったんだけど、発売後に気になってSNSを調べたら、読者から「おい田中!」という投稿があってなんだかすごく盛り上がっていたんです(笑)
(笑)
僕の名前を呼びながら楽しんでもらっているなあって、すごくうれしかった。読者にちゃんと届いているんだって。
僕がうれしかったのは、趣味がすべて仕事につながっていることかな。作家さんとの話題に上がった映画を観るとか、それが仕事というのが本当にいいなって。
職場で漫画を読んでいても、「研究している」って言ってもらえるし(笑)
さらに、「これ漫画にしたら面白いんじゃないかな?」と思ったことを企画会議に提出すれば、それについて編集部のみんなから率直に意見をもらえるのがうれしい。僕、めちゃ嫌いな「アゲハヒメバチ」という虫がいるんです。蛾なんだけど、アゲハ蝶の幼虫に寄生するんですよ。すると、サナギから羽化するのがアゲハ蝶じゃなくて蛾という最悪の虫がいて。
どこで知ったの?その変な虫。
昆虫図鑑。
相当気持ち悪いな。
これを人間に置き換えて企画にしたら賛否両論が出ました。最初に言われたのが「なんで思いついたの?この企画、気持ち悪すぎる」って(笑)
「加藤くん、怖い。普段こんなこと考えているの?!」ってなったよね(笑)
いやいや、反応をもらえるのはうれしいですよ。盛り上がったし(笑)
私は、WEBページの『ガチ恋』のポスタービジュアルを作成したときに、作家さんが「可愛いやつ発見」とTwitterで反応してくれてうれしかったですね。加藤くんが教えてくれたんだよね。
そうそう。だって本当にいい出来だったもん。
今の自分にできることは、作品や考えている企画に対する情報を作家さんよりも持つことかな。それと、流行を知っておくことはすごく大事だと思っていて、作家さんによっては流行りを知らない方もいるので、自分がそれを埋めるかたちになったらいいなと思っている。
僕は、やりたいなと思ったらとりあえず、すぐやってみる。先輩から「『やりたい』は、放置すると『やらなきゃ!』に変わってしまうよ」と教えられたんだけど、最初は観たいと思った映画も2週間ぐらい経つと薄まってしまうよね。
だから、加藤くんは公開日の初日に行っているんだ。
そう、行けるときに行くのはすごく大事にしている。そして、漫画編集者の要素の一つでもあるけど、それを作家さんに伝えること。
雑談のネタにもなるしね。私は、作家さんから信頼される編集者が、やっぱり一番いい編集者だなって思う。そのために、メールの返信を早くするのも意識している。記事ページなどの締切をちゃんと守って仕事をすれば、「あいつしっかりしてるな」って任せてもらえることも増えるので頑張っています。
僕も、「小林さんがやっているからやらなきゃ」って思っている。本当はまだ日数はあるけど、「え?小林さんもう終わらせている。やばい、自分もやらないと」って、すごく刺激になっているよ。
そのあとの目標は、『終末のワルキューレ』に続く作品をつくること。それくらいヒットするような作品をつくれたら一番理想的かな。
僕は、キザな言い方になるけど、「自分が関わった人が幸せになるといいな」とずっと思っていて、漫画編集者からすると関わった作品が売れることが一番。だから僕もヒット作をつくれたらいいなと思っているし、できるようにがんばりたいです。
私、人間ドラマが好きなんだけど、いつか素晴らしい作家さんと出会って、一緒にネームを見て泣けちゃう話をつくりたい。
編集の先輩がついて仕事を教えてもらっているけど、忙しいのにも関わらずちゃんと見てくださっていて、さらにアイデアとかも出してくれるんですよ。また、その先輩以外の誰に聞いても答えてくれる環境が一番ありがたいですね。
入社すると2週間ぐらいそれぞれの部署での研修があるけど、どの部署もみんなすごく良くしてくれるんですよね。僕が「あの映画めちゃくちゃ面白いです」と言ったら、わざわざ僕のところに来てくれて、「観たよ」と言ってくださったりとか。
本当にそう。別の部署の方に「ボードゲーム好きなんですよ」と話をしたら、「今度やりましょう」と言われて、実際に何人かで集まってゲームしたり。
とりあえず言ってみた、じゃないんだよね。
やりたいからなんですよね。やりたくなかったら無理に誘ったりしてきませんし、本当にのびのびしている。
私は、映画とかゲームとかエンタメについて話せる人が多いなって感じた。趣味の合う人が多いですね。高校とか大学時代って、エンタメについて深く喋れる人が少なかったんだけど、コアミックスにいるといろいろと話せるのが楽しい。
みんな、何かしらのエキスパートだよね。
それと、思っていたよりも連日泊まり込んでみたいな感じじゃなかった。編集部って、死屍累々で横たわっていたりするのかなってイメージしていたんだけど、そんなこともなく普通に働いています。それと、男性向けの企画だけではなく、普通に女性向けの企画でバンバン出していけるのもいいよね。
『ガチ恋』もそうだよね。
面白かったらなんでもいいっていう。
もちろん売れるのも大事なんですけど、やっぱり「面白いものを出そう」という気持ちが大きいよね。
自分で考えたものが実際に本になるという体験を入社半年も満たない新人ができることが魅力と思っていて。初めて担当した広告ページは今でも覚えているんだけど、雑誌が本屋さんに並んで、ページを開いたら実際に掲載されていて感動しちゃった。
大手出版社だと3か月くらい研修があってそれから部署に配属されるんだけど、ウチはすぐに編集部に配属されてページに関われちゃう。
「私でいいんですか?」って感じになるよね(笑)
もちろんボツも食らうけど、「ここはこうしたらいいんじゃない?」というように否定されるというよりも改善案を出してくれるよね。だからちゃんと、自分がやった感じがするんだよね。
どの編集者も、自分が担当している漫画を面白くするためにとか、売るためにとか、たくさん工夫されている方が多いので、積極的な努力が苦にならない人は向いてそうかな。
僕は、「なんでもやってみよう」という積極性のある人。情報をアップデートしないといけないところもあるので、そういうことが苦にならず、むしろ楽しいと思える人が向いていると思う。
この仕事は、人の意見を聞いたり、意見交換することがすごく多いんですよね。それこそ作家さんの話を聞いたりして、それを受け入れるのが苦ではない人かなと。融通が利かない人だと、それこそ関係が悪くなっちゃったり、より良いものにするという意味でなかなか難しいところがあるので。
確かに。
もちろん、ゼロイチで企画書をつくるときにはアイデア力もいるとは思うけど、それはマストじゃないよね。結局、判断するのは他の人だったりするから、自分でそこまで思いつかなくても作品づくりのヒントになればいいし。
うん、作家さんにネタを提供するぐらいで。
逆に、我が強すぎる人は向いていないのかなって。やっぱり、みんなで助け合おうとする会社なので、「自分だけがいい思いをしたい」という考えを持っている人は、向いてないのかな。もちろん、野心とかはいいことだけど。
漫画がそこまで好きじゃなかったら、しんどいんじゃないかな。仕事やっていて漫画好きの気持ちがないと作家さんにも伝わるし。
例えば、自分があまり得意じゃない大人の女性向けの作品も、もちろん目を通さなきゃいけないときもあるし、それに対して意見するときもあるので、「青年誌しかやりたくないです」みたいな人は厳しいですよね。
コミュニケーション力も必要最低限あればいいけど、「電話で話すのが本当に嫌で仕方がない」とかだったらツライかな。ただ、オープンマインドである必要はないし。物静かな方もいらっしゃいますからね。